不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

総統の子ら/皆川博子

総統の子ら

総統の子ら

 色々考えさせられる、歴史大作。

 皆川博子は、ヒトラー・ユーゲントの少年たちを、宮部以上にショタ的筆致で、ただし圧倒的に格調高く描出する。ただ事ではない少年らしさは、単なる妄想ではない幻想性さえ孕み、祖国と民族に、純真に自分を捧げる悲劇性を強調する。

 しかしなぜこの物語はかくも空しい悲劇に陥ったのか? ナチス=ドイツが悪だから? それとも、ナチス=ドイツが敗者だから?

 私は、話をこれ以上進めない。ナチス=ドイツは恐らくまだまだ、歴史になれない。これより先、政治領域。趣味の日記で政治を語る愚だけは冒さない。これはこの日記の、数少ない枷の一つだ。