不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

さよなら/森青花

さよなら

さよなら

 『BH85』から3年。森青花が遂に世に放つ、第二作!しかし生憎、注目度は限りなく低いと思われる。

 自宅で転んで動けなくなり、餓死してミイラになった「ひいじい」は、ミイラになればしばらく魂がこの世に残ることを発見する。彼は、大切な人に先立たれた者たちにそれを言い触らし、結果あちこちでミイラ化された死体と、この世に残って、生者と静かに語らう魂が増えていった。本来あり得ない死者との対話を通し、生者も死者も「死別」に折り合いをつける。少なくとも、「ひいじい」が恋をするまではそういう物語である。

 嫌な話ではないが、決してハッピーじゃないところは前作に似ている。これが作者の持ち味かもしれない。

 ただ、死ぬ奴多過ぎ。もちろん死とはそういったものだが、それで世界を描かれた気になってもらっても困る。というわけで、若干問題を孕みつつ、まあファンは読んでもいいかも、という作品に仕上がっている。私自身は、次作に期待をつなごうと思う。