不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

くらのかみ/小野不由美

くらのかみ (ミステリーランド)

くらのかみ (ミステリーランド)

 《ミステリーランド》第一回配本の中で、唯一お子様向けに相応しい作品。これで司書も安心してお子様に薦められるね! 良かったね!

 ただし、この作品は「当て」の要素が素晴らしく本格であり、そこにファンタジーが絡む様は、筋道として実に綺麗で、本格フリークには薦めたい。

 ただし、良いことばかりではない。登場人物多過ぎたのか、子供に限定してさえ描きわけが充分でなく、解決時の衝撃が薄まっている上に、そもそも見分けの段階で四苦八苦する。某スクランブルよりはマシだが、だからといって擁護する気はない。あと、話の展開が、ガキに遠慮してか非常に穏健・穏当である。相続がらみのドロドロな状況なのに、どいつもこいつも通常モードであり過ぎる。

 ミステリの枠内では三作中随一だが、話としては一番食いたりないといえよう。