分岐点/古処誠二
- 作者: 古処誠二
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2003/05
- メディア: 単行本
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中学生は何だかんだ言いつつ純粋無垢だ。あの頃は若かったなあ、と思ったことがない人はいないと思う。そして、だからこそ容易く染まり、歪み、壊れる。古処誠二はこの点に着目し、1945年夏という時代と共鳴させ、戦争の悲劇を描き出すのである。ここで作者の視線は、人死にではなく、人の歪みに注がれる。十三歳特有の青春模様、戦闘による死、居丈高な軍人など、要所をしっかりと抑えつつも、少なくともあの戦争最大の悲劇は人が歪んだことにあると、作品は主張している。このメッセージはとても重く、《エンタメ脳》以外のどこかで手応えを感じてしまう。その意味では『終戦のローレライ』以上の〈感銘〉と呼んでもいいかもしれない。
なお、文章は相変わらず淡白である。ただ実作上でそれがプラスにしか作用していないのは評価したい。重い文体で書かれると多分逆効果。
というわけで、個人的には超お薦めの一作。それにしても古処誠二、メフィスト賞が生んだ本当にいい作家の一人だと思う。
(蛇足)
帯の「ミステリ史上、稀にみるその殺害動機」という一文には、その通りだけれど、この作品に「ミステリ」の価値観を持ち込むのは、作品や戦争の悲劇への冒涜だと思うので、あまり強調してほしくない。逆に言うと、この話でそこを一番重視するような読者は(以下自粛)