不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

神々のプロムナード/鈴木光司

神々のプロムナード

神々のプロムナード

 オウム真理教の事件発生のせいで当初目論んでいたプロットを放棄せざるを得ず、何も決まっていない中で着手された、季刊誌《メフィスト》連載の長編。

 学習塾を経営する村上史郎は、友人松岡の妻・美雪から、夫が失踪して二ヶ月になるのだが助けてくれないかと電話を受ける。美雪にほのかな想いを抱いていた史郎は、彼女と協力して松岡の行方を捜すが、その過程で芸能人・加納諒子も松岡と時を同じくして失踪を遂げていることが判明する。二人の失踪に関連があるのか? ちらつく新興宗教の影も気にしつつ、史郎は謎を追う。

 史郎と美雪の、男と女として揺れ動く心と微妙な関係が最大の読みどころ。特に美雪は、男に頼る自分の人生に嫌気がさしており、彼女がいかに自立するか、あるいはできないのかが話の大きな焦点である。そして、これ以外に読みどころはない。
 重要な謎のいくつかに解答が示されていないのは、看過できない致命的欠陥であろう。