凶笑面/北森鴻
- 作者: 北森鴻
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/01/29
- メディア: 文庫
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どうも乗れない。理由の一端は、「殺人にしなければ気が済まない」作者の傾向にある。短編において、それも連作短編において、警察とかそれ相応の社会的地位を得た主人公でない限り、毎回毎回殺人にでくわすなんてのはそもそもおかしい。しかもそれが全部「出先でたまたま遭遇」なんて、世迷言にも程があると思うのだ。
また、民俗ネタの方が肝心の殺人より遥かに面白いという、イタイ事実がある。高田崇史のように、絶妙にリンクし合うならば、どっちが出来が良いかなんてどうでもいいのだが、如何せん、北森の処理はそこまで巧妙ではない。ていうか明らかに雑。民俗に合わせようと強引に現代の事件を思い付いたのがミエミエ。アラが目立ちすぎるのだ。しかも、大ネタでもないのに、緻密とは正反対の印象を受ける。これが致命的か。つまり、ミステリが話の邪魔をしているとしか思えないのである。
そんな中で比較すると、「鬼封会」が良作と言い得る。現代>>>民俗という図式が、唯一成立しているからか。