不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

QED 竹取伝説/高田崇文

QED 竹取伝説 (講談社ノベルス)

QED 竹取伝説 (講談社ノベルス)

QEDシリーズは、実の所、私が一番心待ちにしているシリーズである。一部確かに不要としか思えない設定があるし、常に一定の質を保つ、なんて感じでもないが、なぜか好きなんですね。正確に言うと、読んで安心する。傑作というのは多かれ少なかれ《異常》であって、ちょっと疲れる。人を大いに感動させる音楽を聴き終わった後、どっと疲れるように。そしてもちろん駄作には、時間の無駄という、もはやプライヴェートには絶対持ち込みたくない試練が待ち受けている。そういうのにぶち当たると、怒りにエネルギーを浪費するという副次的な無駄も生じるし。

というわけで、気楽に読めてそこそこ楽しく、予定調和を崩さない何かに、一定の頻度で接することも大切なんだと思う。ほとんどの人が、多かれ少なかれそういう対象を持っていると思うが、私の読書上のそれの一つが、QEDシリーズなのだ。

『竹取伝説』は、その名の通り、『竹取物語』の謎に迫るミステリ。微妙に現代の事件のメタファーになってるのはいつもの通り。瑕疵を拾うことは恐らく簡単だが、そういうことをやりたくて読んでいるわけではない。俺は憩いと安らぎが欲しいんだ。文句のある奴は前へ出ろ。俺は例によって後ろに下がってやる。後ろが壁だろうが水だろうが崖だろうが、だ。
真面目に評価すると、QEDの水準作ではあろうと思います。つまり、読んで「凄い」とは多分なりません。歴史ミステリがお好きな方はどうぞ。