不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

探偵術教えます P・ワイルド

探偵術教えます (晶文社ミステリ)

探偵術教えます (晶文社ミステリ)

パーシヴァル・ワイルド初体験。

超DQNの男が、通信教育で授かったなまかじりの探偵術をふりかざし、周囲を混乱の渦に陥れるユーモア系連作短編。主人公は頭が弱いとしか思えない(その上調子に乗っている)し、通信教育の教師である《主任警部》も、話が進むにつれて、かなり生臭で頭も強健ではないことが知れてくる。
名探偵をおちょくる姿勢が堅調だが、バークリーのようにブラックではないので、単純に楽しめるのが特徴。何だかんだ言いつつ、最後には事件が解決してしまうのも、作者のアイロニーが悪意に結びついていない証左かと思う。

とにかく四の五の言わずに、読んでほしい。
楽しい一冊だと思う。