レイトン・コートの謎
- 作者: アントニイバークリー,Anthony Berkeley,巴妙子
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2002/09/01
- メディア: 単行本
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『被告の女性に関しては』を読んだ後では、リアル父への純粋に愛情たっぷりな献辞が真にイタイ。
近年急速に読めるようになってきたシェリンガム・シリーズだが、この黄金期屈指のDQN探偵を許容できるかどうかは、読者と本格の距離を測る試金石かと思う。基本的にバークリーは本格を馬鹿にするためにこのようなキャラを作った。こういう創作姿勢は本格と十分に距離を置かねば採れない立場なのだと思う。殊能とか東野とかがそうである以上に。
そして、読者が本格に近すぎた場合は、自分が馬鹿にされているような印象を受け、ムカツクんじゃないかと思うのだ。ていうか二階堂氏とか芦辺氏とかは、バークリーどう思っているんでしょうか。特に後者には、一回ぜひ訊いてみたい。
『レイトン・コートの謎』は、そんなバークリーの性質が、非常に軽妙に出ている。後年は神経症的ととれないこともない出方をするようになったので、こういう素直な時代もあったのねと割としんみりしてしまう。と同時に、ミステリとしてもかなりまともなので、初心者にも安心して薦められる。バランスという意味では、既訳の中では一番かも。
……でも、マジの初心者にいきなり読ませても、多分この凄さはわかってくれないんだろうなあ。
というレベルの毒はしっかり含んでいる辺り、やはりバークリーです。
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