不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

Op.ローズダスト/福井晴敏

Op.ローズダスト(上)

Op.ローズダスト(上)

Op.ローズダスト(下)

Op.ローズダスト(下)

 お台場にあるIT企業中心に起きる、テロの話。北絡み、防衛庁絡み、日本人の平和ボケ絡み。
 『亡国のイージス』『終戦のローレライ』で見せた、終始高止まりするテンションは残念ながらここでは見られないが、下巻に入ると物語は怒涛のように盛り上がるので、エンタメとしては高く評価できる。未成熟な青少年の無垢なる感受性、そして中高年層の信念のそれなりのカッコよさもこの作家らしいところだ。しかし今回は前者に、流石にちょっとこれはどうかと思われるシーンが多い*1。勇壮なストーリー展開と大規模なテーマ設定(問い掛け成分大量含有)にそぐうか否か、判断に迷う。
 あと、紙背にフジテレビがちらつく。非常にウザイ。
 先述どおり、特に何も考えずに読む分には面白いエンタメに仕上がっています。やはり作家としてのキャリア初期に大傑作ものすと、後が大変なんだろうなあ……。

*1:本音を言えば、主人公が精神的にひ弱過ぎると思った。