不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

おれの中の殺し屋/ジム・トンプスン

おれの中の殺し屋 (扶桑社ミステリー)

おれの中の殺し屋 (扶桑社ミステリー)

 未読でした。ホント基本書抜けてるんだよなあ……。
 訳題はやめていただきたいが、内容は実に素晴らしいもので、粋がった暴力と狂気が炸裂し、主人公と物語が破滅へと驀進する様は、なんというかもう勢いとテンションが凄い。これまで読んできた作品に限るが、『おれの中の殺し屋』は、完成度で『ポップ1280』、瞬間的な狂気の噴出で『死ぬほどいい女』に劣るかも知れない。しかし、トンプスンらしさを終始鮮やかに感じさせる、という点においては、トンプスン作品の中でも最高位に位置する。お薦めというか必読であります。