不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

銀河市民/ロバート・A・ハインライン

 読書量が全然足りていないため、SF・ミステリ問わず、基本書がボコボコ抜け落ちている。これもその一つ。
 ある惑星で、奴隷の少年が非常にインテリな乞食に買われ、愛情溢れる教育を受けたあと、故郷を探しに宇宙に飛び出す物語。最初は奴隷なのでなかなか悲惨だが、それも数ページで終わりを告げ、その後少年は(若干の別れはあれ)極めて順調に歩んでゆく。よって苦難を乗り越え云々という終末歓呼類型には当てはまらないが、イベントは盛り沢山であり、SFとしても現代社会には存在しないコミュニティを描くなど、なかなか充実している。ジュブナイルだそうだが、言われなければ気付くまい。行動原理が「社会的に《素晴らしいこと》と認められており、推薦図書に出て来てもおかしくないような、高邁な理想」であることに生理的嫌悪感を抱く向き以外に、大変よい作品として広くお薦めしたい。