カレーライスは知っていた/愛川晶
- 作者: 愛川晶
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/11/12
- メディア: 文庫
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あとがきで「これほど本格にこだわった短編集は、もう二度と書けないだろう」なんてことを書いている。解せない。私の印象では、『カレーライスは知っていた』は全編、非常に気軽に読めるライトな本格なのだが。
愛川晶は、基本的にはアイデアでネタを構築するタイプだと思う。ロジック面での強固な裏付けは期待できない。人物描写も軽いものであり、深刻ぶったところはどこにもなく、さりとて文章の微細表現で襞を表現するわけでもない。普通の文章、普通の《楽しげな雰囲気》で、物語を進めてゆくだけだ。シンプルな水準作。にも関わらず、作者はこれを気負って書いたのだと言う。よくわからない。或いは私の《本格観》は間違っているのだろうか。
話がそれたが、まあともかく、『カレーライスは知っていた』は、表題作に代表されるように、発想の起点とその結果がいまいちしっくり来ない。「カレーライスを食べれば全てがわかる」という思い付きが先に立ち、そこからネタを作ったのだと思うが、これって、カレー食っただけだと真相とかわかんないでしょ。謎が増えるだけで。心意気は買いますが、心意気だけでは二束三文なわけで、この程度で自足するのは勘弁して欲しい。
誤解を避けるべく付言すると、結構楽しかったんですよ。作者は本気でロリコンなんじゃないかと邪推できたことも含めて。そんな感じです。筆を滑らした気がしないでもないが、まあいいでしょう。