不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

魔法博士/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第19巻 十字路 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第19巻 十字路 (光文社文庫)

 少年探偵団もの。多分気のせいでも飽きたわけでもなく、ちょっと不出来だ。魔法博士が少年探偵団をネチネチと苛める、というのが主題となっているが、二十面相がガキ相手の復讐だけを目的に動くのはどうかと思う。大人気ない云々以前に、話のスケールが度を越して矮小となってしまう。あまつさえ苦戦してしまうというのは、いくら何でもさすがにやばい。
 いくら馬鹿揃いであろうとも、金持ちな大人とか美術館から、並居る警官をものともせず何かを盗み出してこそ、二十面相と彼が化ける怪人は輝くのである。そして、「大人も敵わない怪人に、少年少女が健気に挑む!」というノリがなければ、話の緊張感も損なわれよう。二十面相の苦闘も、彼が大人を手玉に取ってこそ、少年探偵団の素晴らしさが対比的に強調され、納得できるのだ。