不壊の槍は折られましたが、何か?

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一枚の切符/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

 一度書いた感想を、間違って保存せずに消してしまった。
 月曜以降精神状態が優れないこともあり、なかなかもう一度書こうという気が起こらない。

 というわけで、手短かに済ませよう。「一枚の切符」は、初期乱歩が清々しく本格に取り組んだ時特有の空気がある一編である。ドンデン返しで真相を放り出す幕切れも実にそれらしく、探偵役の〈ニヤリ〉が絶妙に多様な解釈を誘発する。また、探偵法についても語られるが、非常に良くまとまっており、ページ数以上に〈乱歩の考える探偵のあり方〉について多くが語られた感じ。
 あまり高名な作品ではないが、お薦めである。