不壊の槍は折られましたが、何か?

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スペシャリストの帽子/K・リンク

スペシャリストの帽子 (ハヤカワ文庫FT)

スペシャリストの帽子 (ハヤカワ文庫FT)

 ハヤカワのファンタジー文庫から出た短編集。ネビュラ賞・世界幻想文学ティプトリー各賞受賞作が含まれている。

 「奇妙な味」系の小説においても、物語の骨子自体は整合性が保たれることが多い。要は、起承転結が明瞭であり、「何が起きたのか」という点で読み手のコンセンサスが崩れることも少ない。しかし『スペシャリストの帽子』は違う。一体何が起きているかというレベルで多様な解釈が可能であり、読み手によって十人十色であろう。文章も平易ではなく、筋も飛びまくり。丹念に読もうとすると時間がかかる。しかし、この混沌が非常に趣があって良い。わけがわからないなりに楽しめる。

 ……という風に、私の底浅い頭の中では理解した。どうせ間違いだろうが。いずれにせよ、意味不明だが面白い作品を実現したケニー・リンクのセンスは本物だろう。

 基本的に全編意味不明なので、作品ごとに、紹介や個人的感想を述べても仕方ない。興味のある人は読んでみてください、としか言いようのない作品なのである。ちなみに、日記で大森望も誉めてました。