不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

不思議のひと触れ/T・スタージョン

 『海を失った男』も素晴らしい短編集ではあったが、スタージョンの特色が鮮明に過ぎたような気もする。あの本は、作家と作品の異能度ゆえに安易な読み方を拒む。要するに、広く薦めづらいのである。

 今回の『不思議のひと触れ』はより平易な作品が揃っており、端的に言ってわかりやすい。しかも収録作品が全て傑作と思われる。シオドア・スタージョンへの入門には好適な短編集だ。

 とはいえ、やはりどこか素晴らしく変であり、油断できない。一例を挙げれば、表題作。こういうボーイ・ミーツ・ガール話を書けそうな作家を、今の私は他に知らない。