不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

怪人二十面相/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第10巻 大暗室 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第10巻 大暗室 (光文社文庫)

 これだよ、俺の求めているのは!
 ご多分に漏れず、私はこの作品からミステリに入った。原体験というわけだが、この歳になって読んでみても本当に楽しかった。突っ込みどころは満載だが、最初の一文から惹き込まれ、種々の瑕疵などどうでも良くなる。ただ、このシリーズは、二十面相がチープな怪人に化ける作品が大半を占めるわけで、それらの作品はかなり無茶苦茶である。子供心にも「をいをい」と思いながら読んでいた。

 その意味で、単なる怪盗に終始するこの作品は比較的普通であり、これに満足したからといって、少年探偵団シリーズ全体を、一応成人となった私が楽しめるかは保証の限りではない。続刊で思い出が破壊されるのかどうか、非常に楽しみである。