不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

死が招く/P・アルテ

死が招く―ツイスト博士シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

死が招く―ツイスト博士シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 『第四の扉』で大評判となったアルテの、本邦紹介第二作。
 密室専門のミステリ作家が、構想中の自作とまるで同じシチュエーションで殺される。無論、密室。窓際に置かれた水の入ったコップとかもある。家族には元女優の妻、ちょっと頭の狂った画家の上の娘、まともな下の娘、奇術師の義弟がおり、隣人には引退した医者がいる。他の親族には、オーストラリアに行っちゃった弟がいるらしい。そして探偵を務めるのは、何の博士だかよくわからないツイスト博士。

 メタ構造を持った前作以上に、アルテとカーの近似性は明白である。舞台をわざわざイギリスに持ってくる辺りも、作者のカーへの愛着を感じる。ただ年代は二十年代と若干早めだけれど。

 とは言っても、作風としてはカーより遥かにスマートで、読み心地は普通に快適そのもの。トリック等も、カーのような力技ではなく、ふむふむと納得できるもの。マニアじゃない人にも気軽に薦められそう。いやまあ薦めないけれど。だって、一般人にはそもそもミステリなんてどこが面白いのかわからんですよ。別に一般人を貶しているわけではなく、我々の感性がそこまで特殊化されているということ。我々にとって彼らは邪魔なだけで、向こうには我々はキモイだけだ。俺、何か間違ったこと言ってるか?

 まあそれはともかく、本作は本格ミステリの傑作である。(24日訂正:傑作は言い過ぎ)スマートさをどう評価するかが問題となるだけであろう。