不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ソルトマーシュの殺人

ソルトマーシュの殺人 (世界探偵小説全集)

ソルトマーシュの殺人 (世界探偵小説全集)

 待望久しい、国書の第Ⅲ期最大の目玉。
 と言っても『トム・ブラウンの死体』は未読(見つかるわけねえだろ)のため、グラディス・ミッチェルを読むのはこれが初めてとなる。期待に違わず、非常に面白かった。森英俊氏は「クリスピンと双璧のユーモアの旗手」、なんてことを言ってますが、ミッチェルの場合、ユーモア=皮肉。それもかなり強烈な。センスはいいが、良くも悪くもそれ以上ではない小説とは一線を画してます。あと、オフビート、という煽りは本当でした。「よくあるミステリ」から微妙にずれているのは非常にいい感じです
 ミステリ的な仕掛け(トリックとか)はそこまで凄くはないし、本格に対して思うところがある、なんて感じでもないけど、本格ミステリとしても非常に素晴らしい出来栄えを誇ってます。事件が様々な事情から錯綜しちゃうってのは、まさに俺好み。この作家の本がさらに翻訳されるのを希望しておきますです。