不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

哲学者の密室』/笠井潔再読

哲学者の密室 (創元推理文庫)

哲学者の密室 (創元推理文庫)

 再読、やっと完了。とはいえ、別に読みにくくもなく、それどころか非常に読みやすかった。
 哲学談義も、再読してみればそんなに複雑じゃないし、むしろわかりやすい。昔はこれが意味不明だった。当時と比べ俺自身の知能が進展したと思いたいが、まあ実情は、前は忙しかったかなんかで読み飛ばした、という辺りに落ち着くんだろう。光文社のフォントには馴染めない、ってのもあったしね。創元のフォントは好きなんだよな、なぜか。また、カケル萌え、ナディア萌えに走る人々がいることも、そんなに不思議じゃないなと考えるに至る。二人ともそれなりに魅力的に描かれているのだから。特にナディアには笑えた。馬鹿だし鈍いし、しゃしゃり出るうざいワトソンそのものの女だが、何事に対してもひたむきだってのはひしひしと、伝わりすぎるくらい伝わってくる。意外に好感が持てた。
 あと、収容所長の愛人たるハンナさんが糞尿の中で生活してたのかと思うと、胸が痛みます。トイレくらい設置してやれよ、作者。塔の方にはちゃんとあったのになあ。