魔女/樋口有介
- 作者: 樋口有介
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/04/07
- メディア: 文庫
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広也は調査の過程で、自分が知らなかった千秋の一面を見せ付けられる。彼女の周辺の人物の死、火刑に凝される彼女自身の死に様、篭絡した男の多さ――数々のエピソードは、千秋の魔性を表してやまない。タイトルどおり、そしてみかんが主張するとおり、千秋は『魔女』だったのか? それが本書の興味の焦点である。また千秋の事件と直接関係がないところでも、様々な出来事が人生のままならなさを伝える。人間関係の光と影が浮き彫りになるので、展開はやや重くなりがちだが、そこは樋口有介のこと、広也の姉(結構ファンキー。肩肘を張っている面がなくはない)と、広也の恋人になるであろう少女みかん(ツンデレ)がいい味を出していて、物語に活力を生み出している。主人公の造形は青春小説におけるいつもの樋口有介、つまり結構キザで一見クール、でも弱い部分もたんとある。樋口有介のファンには見慣れた人物像のはずだ。
《魔女》云々の活用が若干突拍子もない点、ミステリ色が薄い点は人によって欠点となり得るが、本書を丸ごと青春小説と考えれば、納得もできよう。樋口ファンにはおすすめしたい。