さよなら妖精/米澤穂信
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2004/02
- メディア: 単行本
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なお、ミステリ色は鮮明ではない。『さよなら妖精』では、日常の謎が何個か提示され、都度さくさく解決してゆく。マーヤの祖国がどこかという謎も、中心的なテーマ性を保持し得ない。その点ではあっさりしているとして批判する向きもあろう。しかし「日常の謎」とは本来、このように解かれるものなのではないだろうか? 何個か提示される謎は、そこまで強烈なものではないし、解明方法もあっさりしている。また謎とその解明も、だから登場人物の境遇が変わる、といった類のものではない。何も解かれなくても、マーヤと彼らの出会いと交流、そして別れに与える影響は軽微だろう。要するに『さよなら妖精』において、謎はちょっと面白い挿話に過ぎない。だが、そうでなければ「日常の謎」と(字義通りに)呼べないと思う。そしてマーヤとの邂逅が日常であったからこそ、ラストが生きるとも思うのである。
もっとも当作に関しては、最近にしては珍しくこちらが本気で感想を書いている。よって、私の感想を読むくらい暇であるなら、リンク先に飛ぶ方が良い。