不壊の槍は折られましたが、何か?

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オイゲン・ヨッフム/バイエルン放送交響楽団 シューベルト:交響曲第9番ハ長調《グレイト》

 1958年2月12日〜14日、ミュンヘンヘラクレスザールでのセッション録音。ステレオです。
 テンポをそれなりに動かしてドラマ性を強調している演奏。第一楽章はパッショネートであり、ぐいっと加速する場面が結構出て来てエキサイトさせられます。コーダの序奏部主題回帰の場面は、テンポを(序奏でのテンポ設定どおり)がくんと落として、力を込めた強烈なアタックを聴かせます。これまたエキサイティング。第二楽章はリズミカルな側面を目立たせた演奏で、緩徐楽章っぽくなく、寂しげな旋律美にも配慮しつつ、全体としては劇的に聴かせます。第三楽章は素朴な旋律美強調をベースとしつつ、打楽器と弦楽器のリズム管理が割と厳格。大変にスケルツォらしい演奏だと思います。そしてフィナーレは(予想通り)熱く燃えてくれます。最初からテンションMAXというわけではなく、じわじわ緊張感を高めていく辺りは実に心憎い。時々金管が笑えるぐらい目立ってますがこれもご愛嬌。というわけで、大変充実した演奏です。オーケストラのクオリティが高い上にやる気も満々なのが嬉しい。
 カップリングは、1973年1月にボストン交響楽団と組んでの《未完成》。こちらはボストン響の音が素晴らしく、ヨッフムの土台がしっかりした造形の上で、柔らかくも暗い響きを見事に実現し、《未完成》という交響曲を堪能させてくれます。素晴らしいです。正直ヨッフムはこれまでCD40枚程度聴いてきたにもかかわらず、それほど好きな指揮者じゃなかったんですが、このシューベルトがブレイクスルーになって一気に理解が進むかも知れません。