酔いどれ探偵街を行く/カート・キャノン
- 作者: カートキャノン,Curt Cannon,都筑道夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/11/01
- メディア: 文庫
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その酒場はさびれた通りで、よく見かける、灯りの暗い共同便所そっくりだった。
都筑節炸裂。最初の一文から、読点の打ち方が生理的にダメ。しかし読み進めると、酒・女・暴力で荒々しく迫る落魄した私立探偵の物語としては、けっこう様になってくる。よってここでは敢えて問責しない。都筑攻撃はただでさえ神経を使うしね……。
物語の内容は、かなり他愛ないもの。全8編、一応サプライズはある。しかし手が込んでいるわけではない。また、女は唇奪われただけで例外なく抵抗をやめ、男の登場人物は言動がやたら粗暴。キングの『スタンド・バイ・ミー』等、アメリカ人作家が回顧的に少年ものを書く際、タフガイ小説を読んで主人公に憧れるガキ(でも言動が余りにもアレな感じの奴)がよく出て来るが、なるほど、年少期にこういうのに憧れたら、馬鹿にしかなれまい。
とはいえ、先述のように、落ちぶれ果て、それでもなおタフに生き、情にも篤いキャラ造形がなかなか印象的なのも間違いない。訳文も(読点が多過ぎるとはいえ)この手の話の限りにおいては、なかなか素晴らしいものだと思う。一読をお薦めしておきたい。
新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサート聴き初め。
まずは、世界初演から始まる。武満徹の没後10年の幕開けに相応しい、なかなか良い現代音楽であった。二群に分かれる弦も、対決というより和合の趣が強い。ふわふわした質感をかなり美味しくいただきました。
そして生誕100年を迎えるショスタコーヴィチ!
協奏曲は、トルプチェスキがたいへん素晴らしかった。軽快・軽妙・リズミカルに音を紡ぐ。技術的にはほぼ完璧。第二楽章で見せた、ふわりとしたタッチ、それによって儚く歌われる旋律。いやあ美しい。そしてアンコールでは、祖国マケドニアの曲を披露。狂ったように旋回する舞曲を、あくまで節度と軽さをもって表現。次回来日時も聴きに行きたい演奏家ですね。ヘルツォークのトランペット、オケの伴奏も万全でした。
交響曲はとにかく素晴らしかったとしか言いようがない。特に第一楽章は強烈なまでのハイテンション! だれるなんてことは一瞬たりとてなく、130名を超える大編成のオーケストラを十全に鳴らしきり、しかし繊細な表現も万全。一部に瑕は見られたとはいえ、オーケストラもかなり上出来。オケも客席も、雰囲気超厳粛。ショスタコーヴィチ最高の交響曲を最高の演奏で聴いている、という確信を少なくとも聴いている間は抱かされた。感動。泣いた。やはり、日本のオーケストラもここまでできるんですよ!